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コードバン

このブログでギフトのネタが続いたので、
一応、キリのいい感じでギフト3部作にします。

大昔、私が小学校に入学する時に祖父から贈られたランドセルが、
今にして思えばコードバンのランドセルでした。

コードバンというのは、
農耕馬のような大きな馬(サラブレッドでは小さすぎる)の臀部の皮革で、
それも、
革製品にする時は皮の内側(内臓側)を表として使うかなり特殊で希少な革です。

ウィキペディアによると
「その起源は未だ謎のままであり、文献も見つかっていない」
「どのようにして発見され、素材として使用されるに至ったかその起源についても謎のまま」
とのことで、
非常に神秘的な感じです。

このコードバンを原皮から製品革にまで仕上げられるタンナー(皮革製造業者)は世界に2社しかないらしく、
そのうち1社は我国の姫路にあるらしいです!

上述のような知識は私が成人してから得たもので、
現在、私はコードバンの革製品は靴しか持っていません。

小学生の頃はそのコードバンのランドセルの値打も分からず、
「なぜ自分のランドセルだけいつまでも表面が滑らかで、
 しかもプラスチックのように光り続けているのだろう?」
と、
むしろ他の小学生のランドセルと違うことに嫌気や引け目みたいなものを感じていました。

成人し、
「あれはコードバンのランドセルだったんだ!」
と気づいた時には既に祖父は他界してました。

今でもそのランドセルの光り方は思い出せますが、
祖父に直接感謝を言うことはできません。

しかし、
今でも、
私が仕事でクライアントに提供する情報が理解されずに拒絶反応を受けてしまった時、
例えば、
まだ早すぎる段階でクライアントに管理会計情報を提供してしまった時、
例えば、
手遅れになる寸前にも関わらず、まだ心づもりのできていないクライアントに
事業承継の提案をしてしまった時等々に、
あのランドセルを思い出し、
「いつかきっと理解してもらえる時が来る」
と揺らがずにいられる大きな財産となっています。

良いもの、良い仕事は、その時に理解されなくても、
いつかきっと分かってもらえる時が来る。
例え提供した本人が他界した後でも・・・

と思えるコードバンのランドセルでした。

海島綿

前回ブログに引き続き、
かつて私がギフトさせていただたシリーズです。

海島綿のバスタオル

これは、
数年前に、あるクライアントの役員の方の快気祝いで贈らせていただきました。

海島綿(かいとうめん)は、
いわゆる「繊維の宝石」とか「クイーン・オブ・コットン 」と言われている繊維です。

日本のテレビや雑誌メディアの言う「セレブ」ではなく、
ホンマの王侯貴族の連中が使っている綿です。

英語ではシーアイアランド・コットン(Sea-Island Cotton) と呼ばれていて、
つまり、海島綿は、まさに直訳 !

カリブ海の西印度諸島の一部だけで産出されるコットンで、
16世紀の後半にイギリスがスペインの無敵艦隊を破って
西印度諸島を支配した時にイギリス王室に献上されたものです。

極上の品質で、かつ、産出量が非常に少なく、
当時のイギリスの王侯貴族はこの海島綿を門外不出のコットンとして王室の専有品としてしまったため、
ずっと世に出ていませんでした。
(葉巻でのコイーバみたいな感じですね)

日本に初めて入ったのは1975年。
今でも「協同組合 西印度諸島海島綿協会」が、配分と品質・縫製管理を厳格に取り仕切っていて、
そこの組合員の商品以外はニセモノ、という徹底ぶりです。

その特徴をネットで調べてみると、
・超長繊維のために撚りの回数が多いので、繊維そのものがふっくらしていて、カシミアのようになめらかでソフトな肌触りで、しかも繊維の中空の部分が他のコットンよりも肉厚なので吸湿性が優れている。
・他のコットンよりも光の反射率が50%ほど高いので、コットンは本来あまり光を反射しないのに絹のように輝くような光沢を放つ。
・普通のコットンの繊維に含まれている油脂分は0.34%くらいなのに、海島綿は0.65%と多いので、触った時のぬめり感が良くなり、ひとたび身に着ければ、他のコットンは身につけたくなくなる程快適で贅沢な着心地。
・しかも、上記のような特徴は人工的な加工ではなく、天然の特性として備わっているため、洗濯を繰り返してもそれらの性質が損なわれにくい。

という強烈なモノでした。

日本で市販されている海島綿を使った製品をいろいろ探したのですが、
最も大きいものでバスタオルまででした。

タオルケットとか、ベッドシーツとか、
大きなモノは今でもイギリスの王侯貴族しか入手できないのでしょうか・・・

我が家も1枚だけバスタオルを入手しましたが、
その使い心地たるや・・・
・・・使うほどに孤高・伝統・希少という言葉を感じる、襟を正したくなるほど凄いモノでした。

綿のバスタオルなぞ今やコモディティですが、
そんな中でもやはり飛び抜けて凄いものはあります。

会計事務所も然り。

RM

あるクライアントの経理部長の奥様がバーテンダーでして、
先日、心斎橋にて独立開業されました。

店名だけで「こだわりのショットバー」と分かるくらい気合の入った店です。

で、
オープン祝いに何を持って行こうかと
他のバーテンダー(ソムリエ資格もあり)に相談しましたところ、
「私は同業者のオープン祝いにはよくシャンパンを持って行きます」との回答でした。

結局シャンパンで、
「とにかくRMでマグナムボトル」というモノを探すことにしました。

当事務所は大阪のいわゆる新地という繁華街からすぐの場所にありますので、
昼休みに新地の酒屋を回りましたが、
「RMでマグナムボトル」は全く見つかりませんでした。

このRM、
レコルタン・マニピュランの略で、
畑での葡萄の栽培、ワインの醸造、ボトリングまで全て自分で行うシャンパンの造り手のことです。

零細な造り手が多いので、
ハーフボトルやマグナムボトルというバリエーションを出すリスクは回避してる事が多いのではないか・・・
とは酒屋の方のコメント。

最終的には、
ジャック・セロスという造り手の、普通の750mlのボトルにしました。

このジャック・セロスというのがまた神格化されたこだわりの造り手でして、
完全な自然農法(ビオ・ワイン)。
つまり手間はかかるが余計な農薬や肥料を使わず、
畑の持つ本来の個性が発揮されるよう葡萄を栽培し、
その葡萄から添加物なしのワインやシャンパンを造っている・・・らしいです。

ジャック・セロスの年間生産量が4,000本。
有名なモエ・エ・シャンドンの年間生産量が25,000,000本。
(モエ・エ・シャンドンはNM(ネゴシアン・マニピュラン))

その差6,250倍 !

どちらも徹底してるので凄いと思いますが、
御社ならどちらの道を選びますか?

オーディオ設置

今月に入り、
事務所内の職員作業スペースにオーディオを設置しました。

敢えて、新人の中でも最年少の職員に「オーディオ運用管理責任者」になってもらいました。

ipodも接続できるのですが、
今はとりあえず、私の手持ちの200枚ほどのCDをコンテンツとしているようです。

で、
そもそも全員がオーディオ設置に賛成してるかどうか分からない中での強行設置だった上に、
職員は20代から60代まで年齢層は幅広く、当然に音楽の好みは様々のはずです。
音量も、人によってうるさく感じたり、小さいと感じたり・・・

そんな中で、最年少の新人がいかにオーディオを運用管理していくか・・・

なかなか難問ですが、
実はこれは我々の本業にもちょっと関連する論点です。

税金をゴマかそうとしたり、粉飾をしそうなクライアントがいたとして、
いかにして「あるべき姿」の決算をするよう、
「その気」になってもらうか。

無茶な投機や儲け話に走りそうなクライアントがいたとして、
いかにして落ち着いて再考してもらうよう「その気」になってもらうか。

つまり、方向性の違う方々にいかにして「その気」になってもらうか。

これはもう、
誠心誠意のコミュニケーションしかないと感じていますが、
やはり、こちらの考え方と態度と場数がモノを言います。

「オーディオ運用管理」が良い訓練の場となればいいのですが・・・

Stay hungry, stay foolish.

2005年のスタンフォード大学卒業式でのスティーブ・ジョブズの「伝説のスピーチ」での最後の締め括りの言葉です。

ご興味のある方は、
インターネット上の動画ですぐに観れます。

私は事務所で時々、クライアントの若い経営者、経営後継者、幹部の方と観ます。

この度の当事務所の新人研修でも観ました。

伝統的な会計情報から未来を見るには?

現行の企業会計の会計情報は、
原則として過去の情報から作成されています。

(一部に引当金等、見積り計算を要するような例外的なものはあります)

しかし、
決算書の見方を少し訓練すると、
企業の未来の姿も見えてきます。

私は、
いわゆるB/S(貸借対照表)は、
未来を見るために使っています。

「あ~
 この会社は、このままでは先々苦しくなってくるなぁ」
とか、

「しばらくは安泰だ、むしろ資金使途に困っているぞ」
とか、

「これは事業承継が大変だぞ」
とか・・・

会計制度は都度都度(今までもこれからも)
大きく変わりますが、
会計処理によって企業の実態が変わることは全くありません。

ですから、
何を読み取るかという目的をハッキリさせて、
その時その時の制度会計(企業会計)の独特のクセを頭の中で是正すると、
今までの伝統的な貸借対照表も、
この先、変化してゆく制度会計の決算書も、
いずれも未来を見るために意外と有益な情報となります。

それ以外にも、
完全に未来を見るための「意思決定会計」という分野がありますが、
そのハナシはまたいずれ・・・

東海バネ工業株式会社のカンブリア宮殿オンエアに思う その2

先日ブログに書きました東海バネ工業株式会社のオンエアにつき、
さらに続編を書きます。

番組の中で、
現代の名工にも選ばれたバネ職人の梶川信行氏が、
1メートル以上のバネをチョチョッと見ながら
あっという間に1ミリ以下の歪みを修正している場面がありました。

梶川氏は、この道45年。

その作業している姿を、
これまたこの道20年以上のバネ職人達が
技術を盗むべく真剣に観ながら
「私達には、この歪みは分からないんです」
と言っていました。

実は、私ども会計事務所も職人的な世界です。

センスと経験のある会計士は、
初めて訪問する会社でも入口から応接室に通される僅かな間だけで
かなり正確にその会社の「歪み」を感じ取れることが多いです。

さらに、
その会社の工場やオフィスを少し観たならば、
ほぼ確実にその会社の歪みを正確に把握できます。

ただ、バネのようにあっという間に修正できませんが・・・

梶川氏は、バネの歪みを修正するために、
自作の独自ツールを使用しています。

ここにも会計事務所に通じるものがあります。

クライアントの歪みを正確に素早く把握し、
効果的な独自のツールを用いて修正していく。

梶川氏の姿を観ながら、
「我々もこうあらねばイカンなぁ」と、
襟を正した場面でした。

東海バネ工業株式会社のカンブリア宮殿オンエアに思う

去る2011年6月23日に、
当事務所のクライアントである東海バネ工業株式会社(実名公表は了承済み)が
カンブリア宮殿にてオンエアされました。
周辺の多くの方々からは「感動した」という感想を直接間接に聞きました。

しかし、
私個人としては「物足りない」という感想です。

ほかにも東海バネ工業の凄い部分は山ほどあるのに・・・

確かに、当日のオンエアでは、東海バネ工業の最も凄い部分を
1時間の放送枠の中に上手に編集して収めているとは感じました。
その編集能力、構成能力は見事です。

できれば、カンブリア宮殿に東海バネ工業続編、続々編を望みたいです。

例えば、

・平均受注ロット5個を維持継続し利益を確保するために、
 どれほどITを駆使しているのか。

・先代の経営者の経営方針から大転換するにあたり、
 今の渡辺社長にどれほどの圧力があり、どのようにそれを捌いたのか。

・昭和53年の既存設備廃棄にあたり、
 どのような事前事後の戦略的行動がなされたのか。

・納期遅れほぼゼロを毎年継続するために、
 在庫やITにどのような工夫をしているのか。

・経産省のIT企業100選に選ばれるほどの
 ITを駆使する企業になったキッカケと、その実施の歴史はどうなのか。

・「東海バネしかできない」技術を維持継続するために
 渡辺社長は今何を見てどう動いているのか。

・「従業員のモチベーションを高める」ために、
 啓匠館や技術検定制度以外にどのようなことがなされているのか。
 
・自社の業務とは直接に関係ない事象
(工場見学の受入れや、他の経営者との関わり等々)に、
 どのようなスタンスで取り組んでいるのか。

・今後、短期・中期・長期的にどのような方向性を考えているのか。

等々等々・・・

まだまだここに羅列するネタはあるのですが、
この辺で止めておきます。

東海バネ工業では、
上述のようなテーマに関して、
どれも見事で明確な回答があります。

それを知っている私としては、
どうしてもカンブリア宮殿のオンエアを「物足りない」と感じてしまいます。

マスメディアに流れる情報はエッセンスではありますが、
その裏には膨大な思考と実践があります。

私は立場上、守秘義務があるので話せませんが、
ご希望いただいたら渡辺社長を紹介しますよ。

呼吸と出入口

先日、
あるお寺のご住職から聞いた話です。
(そこのご本尊は毘沙門天)

「まず自ら何かを差し出さないと、得られるモノはない」

つまり、
「出入口」と書くのは、
まず「出る」のであって、出てから「入る」という順序である。
決して「入出口」とは書かない。

また、
「呼吸」も、
まずは「呼ぶ」(「息を吐く」)、そして「吸う」という順序で、
人は産まれたときにまず「呼ぶ」(息を吐く)、
そして、
人生の最期に「吸う」つまり「息を引き取る」という。

という内容でした。


経営も同様で、
何か新しい改革を断行するとき、
何か新しい方向性に向かうとき、
何か新しいモノを産み出すとき、
順序として、
まずは何かを廃棄する、手離す、差し出さないといけません。

それは、
大口の得意先かもしれないし、
既存の技術かもしれないし、
既存の設備かもしれないし、
古参の従業員かもしれません・・・

まずは肺の中の空気を全て吐き出してカラッぽにしてから、
新鮮な空気を吸い込むという、深呼吸の手順です。

深呼吸は頭の中の通りにできますが、
経営改革を深呼吸のように実行するのは
先行きが見えないだけに恐いですし、
感情も絡みますし、
関係者も多数になるだけに、
実に実に大変です。

それでも実行しないと、
結局、息を吸ってる上にまた吸うことになり、
企業も「息を引き取る」ことになってしまいます・・・

この「手離す決断」
これこそが経営者の仕事のうちの一つでしょう。

氣を発すれば・・・

将棋の米長邦雄元名人が名人位を獲得する前に、
自宅を改造して
「米長道場」として若手プロ棋士の自由対局の場を提供し、
自らもその自由対局の中で研究していたというのは有名な話です。
そして、その「米長道場」が史上最年長名人たる米長名人誕生の原動力となりました。

米長元名人は著書で、
「米長道場は、主宰者が必ずタイトルを獲るという強い氣を発していたから
 強い若手が集まった。
 もしも主宰者が氣を発していなければ、
 いくらご馳走や酒を振舞っても誰も来ない。」
という意味の事を書いています。

これはドキリとする記述で、
企業体も(会計事務所も)、経営者が勢いのある強い氣を発していなければ、
給与水準だけ高くしても強い人は集まらない、
と指摘されているような気がします。

しかも、
自分が強い氣を発しているだけではダメで、
若手が腕を磨く場を提供したり、
自ら子供ほども年齢の違う若手や自分の弟子に教えを乞う真摯な姿勢等々、
他の条件も揃って初めて強い若手が集まるという逸話です。

逆に、
組織のトップがヨレヨレだと
強い若手プロ棋士、つまり自らも将来タイトルを獲るような若手の人材は集まらず、
ヨレヨレの人材ばかりになって組織も弱体化するでしょう。

本日も、前日のブログと同じ結論になってしまいました。
まずはやはり、己(自社、経営者)の姿勢が大切。
ということですね。